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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
室生犀星『文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子』。同一底本的分册已合并为一书。收入:童子、ゆめの話、あじゃり、蛾、幻影の都市、香爐を盗む、三階の家、しゃりこうべ、天狗、童話、後の日の童子、不思議な国の話、不思議な魚、みずうみ。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,454 字 · 357 页
四
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――私はここまで話すと、客はすぐ微笑い出し、それは詰らない極くありふれた話だと云った。
「それは全然恐犬病なんだ。はじめから特殊な精神異常者にすぎないんだ。むかしの狐憑きとかいう奴はみないまの恐犬病なんだから。」私もそれに同意した。
「恐犬病はたしかなんだ。ところが今でもその黒壁には、権現堂があって天狗がまつってあるのだ。ことに僕の国の方ではその天狗というものが、実に流行っているのだ。」子供の時分に、すこし外が暗くなると、すぐこの天狗が出るということを、母親や近所のものから教えられた。実際どういう神社へ行っても必っと天狗の額がかかっていたのである。
「だから古い樹にはきっと天狗が棲んでいると云われたものだ。」
「では今でも君はそういうことがあると思っているのかい。」そういう客に、私は頭を振って見せ、これを否定んだ。
「いや、ただそういう古い樹には古いと云う事丈が人間に何かしら陰気な考えを持たせる丈なんだ。その外には何んでもない。」
私はそういうと客と二人で、黙って対い合った。古い樹というものの沈鬱な、おおいかぶさるような枝ぶりが、私の目には暗いかげを作り、だんだん郷里の町の方へ、私の考えを連れ込んで行った。