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どうじ

文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子

室生 犀星

室生犀星『文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子』。同一底本的分册已合并为一书。收入:童子、ゆめの話、あじゃり、蛾、幻影の都市、香爐を盗む、三階の家、しゃりこうべ、天狗、童話、後の日の童子、不思議な国の話、不思議な魚、みずうみ。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,454 字 · 357 页

青空文庫

「ほら、離亭で朱子を縫うている。見えるかな、鳥籠のある竹縁のそばにいるではないか。」

「ええ、呼ぼうか知ら。」

「それよりもそっと行って驚かしてみせたらどうだ。」

童子は、すばやく玄関から次ぎの部屋をぬけ、離亭への踏石へおり立とうとしたとき、一軸の仏画が床の間に掛けられてあるのを見戍った。

「どうしてああいうものを掛けておくの。あの絵は見たことがある……。」

「あれはね。」

笏は、悲しそうに童子と仏軸とを見較べ、躊躇ってやっと重い口をひらいた。

「あれは、おとうさんが妙に寂しくなると掛けてみたくなるものだ。お前があれを見ることが厭なら止めてもよいが……。」

「でも、へんですね。」

古い軸の上に、細い目をしたふっくりした顔があった。蓮華を台に、古い、さびしい仏は坐っていた。が、その感じは、月夜のように蒼茫とした明るみを持っていた。

童子は、庭石の上に降り立った。まわりを青篠でめぐらした離亭で、朱子を縫う針のきしみが厚い布地であるためか、竹皮を摩するような音を立てていた。童子は、母親の、白い襟足と瘠せた肩とを目に入れ、そして可懐しそうに心をあせったためか、竹縁にぎしりと音を噛ませた。