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どうじ

文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子

室生 犀星

室生犀星『文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子』。同一底本的分册已合并为一书。收入:童子、ゆめの話、あじゃり、蛾、幻影の都市、香爐を盗む、三階の家、しゃりこうべ、天狗、童話、後の日の童子、不思議な国の話、不思議な魚、みずうみ。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,454 字 · 357 页

青空文庫

「お母様、その笛をおそうじしてくだすっても、僕それを吹けそうにもないの。」

「どうしてでしょう。」

「どうしてって僕そんなものを吹いて居られないんですもの。」

童子は、暗い顔をした。蝙蝠のように黝ずんだ或る影が過ぎ去った。――笏も、その妻も、きゅうに圧し黙って、哀れな己れの子供とその言葉を裏返しして眺めた。

「そうね。お前はそういう笛なぞ吹いていられなさそうね、母さんが悪かった、母さんは大へんなことを忘れていたから、ついお前を困らせた。」

「いえ。」

童子は、母親をなぐさめようとして、笛の掃除を止めかかったその時に、よく甘えるときするように靠れた。そして低い殆ど囁くような声で言った。

「それでも時々、ほんのときどきだけれど、僕笛を吹いてみたいの。」

母親は泪ぐんだ。「そうだろうね、けれどお前の居るところではね。」

笏は、これも立膝をだいて悄然として坐っていた。

「おれが吹いてやってもいいよ、よくお前のこないときにでも、いつでもお前の居そうなところへとどくようにね。」

童子は微笑った。そういう父親を憐むような顔付をしていた。

「けれども僕のいるところへは、いくらお父さんの笛でも聞えて来はしない、僕そんな気がする。