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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
室生犀星『文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子』。同一底本的分册已合并为一书。收入:童子、ゆめの話、あじゃり、蛾、幻影の都市、香爐を盗む、三階の家、しゃりこうべ、天狗、童話、後の日の童子、不思議な国の話、不思議な魚、みずうみ。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,454 字 · 357 页
ところどころに穴が開いていて、そこから杖をさし込むと、一間もある杖がらくに沈み込んでしまうんだそうですよ。」
私はそこまで黙ってきいていましたが、思わず口を挿しはさみました。
「じゃその穴から落ち込んでしまえば、それきり沈んでしまうわけね。そんなに深いとすると。」
「そうだとも、実際はどれだけあるか分らないんだけれど、岸の浅いところだって泥沼のようになって落ちこむと、足掻きもできないそうだよ。ずいぶん怖いところでしょう。」
姉は、そう言って医王山の方へ、ふいに顔を向けました。私もそのふしぎな山と、山の上にある青い池のことで、益々いろいろなことを考えられてくるので、しずかに山をながめていました。山というものは、じっとしているようで、そのじつ、眼を凝らしてながめていると、なんだか少しずつ動いているような気がしてならないものです。わけても大きければ大きいだけ、なお、むずむずと目にわかるかわからないかの程度で、まるで息をしているような気がするものです。
二人がそうして眺めているうち、うす甘い春早やに咲く杏の花の匂いが、庭の垣根の方からそよついて流れてきました。