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だんそうがん

断層顔

海野 十三

「探偵よみもの」1947(昭和22)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,033 字 · 33 页

青空文庫

老探偵は、その女客を迎えて、応接間に招じ入れた。

女は毛皮のオーバーを脱いだ。その下から真黄色なドレスがあらわれた。黄色いドレスと紅いルビーの首飾と蒼ざめた女の顔とが、ロマンのすべてを語っているように思った。探偵は、自分の脳髄の中のすべての継電器に油をさし終った。

「どうぞお気に召すままに……。で、どんなことでございますかな、あなたさまがお困りになっていることは……」

帆村は、黄金のシガレット・ケースを婦人客にすすめた。

「困りましてございます」客は煙を一口吸っただけだった。「……あたくし、恐ろしい顔の男に、あとをつけられていまして……。なんとか保護していただきたいのですけれど」

「それはお困りでいらっしゃいましょう」

恐ろしい顔の男につけられている、保護を頼みたい――と、女客はいう。古めかしい事件だ。五千年前のエジプト時代――いや、もっと大昔のエデンの園追放後にはもう発生したその種の事件だった。それが今もなお、こと新しくおい茂るのだ。

「で、その男をどう処置すれば、ご満足行くのでございますか、奥様」

探偵は、このとき始めて奥様と呼んだが、それはこのまだ名乗らない婦人にとって正に図星だった。