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にいづまのしゅき

新妻の手記

豊島 与志雄

「再建評価」1949(昭和24)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,807 字 · 22 页

青空文庫

私は母に、翻訳の代償として、と言えばおかしいが、和裁を教えて貰うように願った。

「吉川もそう申しておりましたの。」

「へえー、貞一さんがねえ。」

母は怪訝そうに私を見た。

「貞一さんには関係ないことですが、あなたがそう言うなら、やってごらんなさい。」

そして私は、針仕事を教わることになったが、少しは心得もあったし、興味も持てた。母は教えるとなると、細々と丹念な注意を与えてくれた。然しそのため、私の仕事はたいへん多くなった。

いったい母は、すべてのことに几帳面なのである。室の掃除だって、箒の使い方から、艶布巾のかけ方から、廊下の雑巾がけまで、一定の方式があって、私はそれをすっかり身につけなければならなかった。食後の片付物についても同様である。或る時、午前中薄曇りなのに洗濯をしたところ、午後から翌日中雨が降って、たいへん困ったことがあった。

「お洗濯をする時は、わたしに相談なさいよ。天気のことについては、新聞の天気予報より、わたしの方が確かです。」

それも、毎日のことはどうか分らないが、洗濯に際しては、母の見当はよくあたった。私は相談することにした。

「今日は、お洗濯をして宜しいでしょうか。