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にいづまのしゅき

新妻の手記

豊島 与志雄

「再建評価」1949(昭和24)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,807 字 · 22 页

青空文庫

」

母は庭に出て空を仰ぎ、いいでしょうとか、いけませんとか、指図をする。からりと晴れてる朝でもそうなのである。

それが、実は、今になって思い当るが、重大なことだった。なんにも分らない小娘ならいざ知らず、一家の主婦が、お洗濯をして宜しいでしょうか、とは何事であろう。せめて、お洗濯をしようと思います、とでも言えばまだよかった。だが私はうっかり暮していた。

或る日、母の留守に、アルバイトをしている学生だという青年が来て、洗濯石鹸とちり紙を買ってくれというので、私は少し買ってやった。あとで、そのことを母に告げると、母は不機嫌そうに黙りこんで、やがて私をたしなめた。

「学生だかなんだか分るものですか。一度買ってやると、また何度も来ますよ。これからは、家のひとが留守だから分りませんと、そう言ってお断りなさい。買物のことは、わたしに相談してからするんですよ。」

そして品物の金高を聞いて、その金を母は私に返してくれた。私はへんな気持ちになった。

だいたい、私は月に千円ずつ小遣銭を貰っていた。結婚して翌月からのことである。吉川が言ったところによると、母は吉川に、美津子さんもお友だちがあったり、お化粧品も好きなのがあるだろうし、お小遣はどれぐらいあげたらよいかと、尋ねたそうである。