轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 页
会ったらあれも言おう、これも言おうと思っていた気持ちが、もろく叩きこわされている。東京で描いていたイメージイが愚にもつかなかったと思えて、私はシャンと首をあげると、灰色に蜿蜒と続いた山壁を見上げた。
造船所の入口には店を出したお養父さんとお母さんが、大工のお上さんと、もう店をしまいかけていた。
「オイ、この足袋は紙でこしらえたのかね、はいたと思ったらじき破れたよ。」
薬で黒く色染めしてあるので、はくとすぐピリッと破れるらしい。
「おばさん! 私はもう帰りますよ。皆おこって来そうで、おそろしいもん……」大工のお上さんは、再製品のその繻子足袋を一足七十銭に売っているんだからとても押が太かった。大工の上さんが一船先へ帰ると云うので、私も連れになって、一緒に船着場へ行く。
「さあ、船を出しますで!」
船長さんが鈴を鳴らすと、利久下駄をカラカラいわせていた大工の上さんは、桟橋と船に渡した渡し子をわたるとき、まだ半分も残っていた足袋の風呂敷包みを、コロリと海の中へ落してしまった。
「あんまり高いこと売りつけたんで、罰が当ったんだでな。」
上さんはヤレヤレと云いながら、棒の先で風呂敷包みをすくい取っていた。