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しんぱん ほうろうき

新版 放浪記

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 页

青空文庫

男ってどうしてこんななのだろう……。

「フンそんなに浜は不景気かね。」

肌をぬいで、髪に油を塗りながら、お久さんは髪をすいていた。

「何だよお前さんのその言いかたは……」

お婆さんが台所で釜を洗いながらお久さんに怒っていた。雨が降っている。うっとうしい四月の雨だ。路地のなかの家の前に、雨に濡れながら野菜売りが車を引いて通る。

神様以上の気持ちなのか、お君さんは笑って、八百屋とのんびり話をしていた。

「いまは丁度何でも美味しい頃なのね。」と云っている。

雨の中を、夕方、お久さんと御亭主とが街へ仕事に出て行った。婆さんと、子供とお君さんと私と四人で卓子を囲んで御飯をたべる。

「随分せいせいするよ、おしめりはあるし、二人は出て行ったし。」

お婆さんがいかにもせいせいしたようにこんなことを云った。

(五月×日)

新宿の以前いた家へ行ってみた。お由さんだけがのこっていて古い女達は皆いなくなってしまっていた。新らしい女が随分ふえていて、お上さんは病気で二階に臥せっていた。――又明日から私は新宿で働くのだ。まるで蓮沼に落ちこんだように、ドロドロしている私である。いやな私なり、牛込の男の下宿に寄ってみる。