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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 页
不在。本箱の上に、お母さんからの手紙が来ていた。男が開いてみたのか、開封してあった。養父の代筆で、――あれが肺病だって言って来たが本当か、一番おそろしい病気だから用心してくれ、たった一人のお前にうつると、皆がどんなに心配するかわからない、お母さんはとても心配して、この頃は金光様をしんじんしている、一度かえって来てはどうか、色々話もある。――まあ! 何と云う事だろう、そんなにまでしなくても別れているのに、古里の私の両親のもとへ、あの男は自分が病気だからって云ってやったのかしら……よけいなおせっかいだと思った。宿の女中の話では、「よく女の方がいらっしてお泊りになるんですよ。」と云っている。ブトウ酒を買って来た、いままでのなごやかな気持ちが急にくらくらして来る。苦労をしあった人だのに何と云うことだろう。よくもこんなところまで辿って来たものだと思う。街を吹く五月のすがすがしい風は、秋のように身にしみるなり。
夜。
ここの子供とかるめらを焼いて遊ぶ。
*
(五月×日)
六時に起きた。
昨夜の無銭飲食の奴のことで、七時には警察へ行かなくてはならない。