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しんぱん ほうろうき

新版 放浪記

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 页

青空文庫

首にぐるぐる白い首巻をまいて

汽船を恋した私だった。

一切合切が、何時も風呂敷包み一つの私である。私は心に気弱な熱いものを感じながら、古い詩稿や、放浪日記を風呂敷包みから出しては読みかえしてみた。体が動いているせいか、瞼の裏に熱いものがこみあげて来ても、詩や日記からは、何もこみ上げて来る情熱がこない。たったこれだけの事だったのかと思う。馬鹿らしい事ばかりを書きつぶして溺れている私です。

汽車が高崎に着くと、私の周囲の空席に、旅まわりの芸人風な男女が四人で席を取った。私はボンヤリ彼等を見ていた。彼達は、私とあまり大差のないみすぼらしい姿である。上の網棚には、木綿の縞の風呂敷でくるんだ古ぼけた三味線と、煤けたバスケットが一つ、彼達の晒された生活を物語っていた。

「姐御はこっちに腰掛けたら……」

同勢四人の中の、たった一人の女である姐御と呼ばれた彼女は、つぶしたような丸髷に疲れた浴衣である。もう三十二三にはなっているのだろう、着崩れた着物の下から、何か仇めいた匂いがして窶れた河合武雄と云ってもみたい女だった。その女と並んで、私の向う横に腰かけたつれの男は額がとても白い。