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めいじびじんでん

新編 近代美人伝 (上)

長谷川 時雨

長谷川時雨『新編 近代美人伝 (上)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:明治美人伝、明治大正美人追憶、樋口一葉、一世お鯉、大橋須磨子、竹本綾之助、豊竹呂昇、平塚明子(らいてう)、松井須磨子、芳川鎌子。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,076 字 · 256 页

青空文庫

女人の誇りを、恋人の前でまで、赤裸に投捨てられないものの恋は、かなしいが当然で、彼女は自ら火を点けた焔を、自らの冷たさをもって消そうと争った。

彼女の恋愛記は成恋でもなければ勿論失恋でもない。恋というものに対して、自らの魂のなかで、冷熱相戦った手記であると同時に、肉体と霊魂との持久戦でもあった。彼女もまた旧道徳に従って、秘に恋に苦しむのを、恋愛の至上と思っていたらしい。

彼女を恋に導いた友達――野々宮某女は、思いあがった彼女の誇りを利用して、巧みに離間しようとして成功した。とはいえ、その実それは、一葉自身の弱点でもあった。

恋するものの女らしさ――私はそう思う時に女心の優しさにほほえまずにはいられない。それは彼女が初めて島田髷に結った時のことである。その日彼女が半井氏を訪れたのは、人の口に仇名がのぼり、あらぬ名をうたわれるのを憤って、暫時、絶交しようと思っての訪問であった。そうした日であるのに、珍らしくも一葉は島田髷の初結をした。その日は二十五年六月二十五日のことである。

「しのぶぐさ日記」には、

梅雨降りつゞく頃はいと侘し、うしがもとにはいと子君伯母君二処居たり、君は次の間の書室めきたるところに打ふし居たまへり。