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ほうそくについて
方則について
寺田 寅彦
「理学界 第十三巻第四号」1915(大正4)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,493 字 · 17 页
科学の方則は物質界における複雑な事象の中に認められる普遍的な連絡を簡単な言葉で総括したものである。事実の言い表わしであって権利も義務も訓戒も含まれていない。しかし今ここで方則の定義や法律と方則との区別などを喋々しようとは思わぬ。ただかくのごとき方則というものが如何にして可能であるかという事に関して浅薄ながら半面観を試みたい。
方則が可能であるためには宇宙の均等という事が必要である。時と空間に対して不変な事実が認め得られる事が必要である。かくのごとき事実が吾人に認め得られるというのは不思議な事ではあるまいか。
華厳経に万物相関の理というのが説いてあるそうである。誠に宇宙は無限大でその中に包含する万象の数は無限である。しかしてこれらは互いになんらかの交渉を有せぬものはない。風が吹いて桶屋が喜ぶという一場の戯談もあながち無意義な事ではない。厳密に云えば孤立系(isolated system)などというものは一つの抽象に過ぎないものである。例えば今一本のペンを床上に落とせば地球の運動ひいては全太陽系全宇宙に影響するはずである。一本のマッチをすればその光は全宇宙に瀰漫してその光圧は天体の運動に幾分の変化を生じなければならぬはずである。