轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
たびのたびのたび
旅の旅の旅
正岡 子規
「日本」1892(明治25)年10月31日から四回
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,120 字 · 10 页
汽笛一声京城を後にして五十三亭一日に見尽すとも水村山郭の絶風光は雲煙過眼よりも脆く写真屋の看板に名所古跡を見るよりもなおはかなく一瞥の後また跡かたを留めず。誰かはこれを指して旅という。かかる旅は夢と異なるなきなり。出ずるに車あり食うに肉あり。手を敲けば盃酒忽焉として前に出で財布を敲けば美人嫣然として後に現る。誰かはこれを指して客舎という。かかる客舎は公共の別荘めきていとうるさし。幾里の登り阪を草鞋のあら緒にくわれて見知らぬ順礼の介抱に他生の縁を感じ馬子に叱られ駕籠舁に嘲られながらぶらりぶらりと急がぬ旅路に白雲を踏み草花を摘む。実にやもののあわれはこれよりぞ知るべき。はた十銭のはたごに六部道者と合い宿の寝言は熟眠を驚かし、小石に似たる飯、馬の尿に似たる渋茶にひもじ腹をこやして一枚の木の葉蒲団に終夜の寒さを忍ぶ。いずれか風流の極意ならざる。われ浮世の旅の首途してよりここに二十五年、南海の故郷をさまよい出でしよりここに十年、東都の仮住居を見すてしよりここに十日、身は今旅の旅に在りながら風雲の念いなお已み難く頻りに道祖神にさわがされて霖雨の晴間をうかがい草鞋よ脚半よと身をつくろいつつ一個の袱包を浮世のかたみに担うて飄然と大磯の客舎を出でたる後は天下は股の下杖一本が命なり。