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りょかくきじけん
旅客機事件
大庭 武年
「探偵」駿南社、1931(昭和6)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,209 字 · 21 页
そんな事がつい、私の気持を煽り、脅迫めいた事を言わせる事になったのです」
「ハンマアで撲り殺すぞと言ったのか?」
「違います。――其麼あく迄我々に対して悪魔のような態度をとるなら、こちらも悪魔になってやる。幸い貴方は血圧が高いし、心臓が弱いから、機を四千米ばかりに上げて、貴方を高空病にかからせて命を取ってやる、と脅かしたのです。そこへ便所から綿井氏が出て来たので、私は操縦席へ帰ったのです」
――三枝の答弁には淀みが無かった。然しその供述を立証する何等の証左も無い事は、如何とも出来なかった。係官一同は、錯綜した事件の外貌から、出来得る限りの真意を掴み取ろうと考え、次のような可能的な仮説を作り上げてみた。
A 綿井が加害者である場合
彼は商業不振より自殺を決心したものの、機上に於て同乗客の鞄中に大金のあるのを知り、三枝が秀岡を脅迫した事実あるを幸い、自身が兇行を演じて大金を奪い、自分は予定通り自殺を装って飛行機から飛び降りたが、落下傘に就ての知識が薄かったので、遂に惨死した(然しこの場合、不審な事は、その屍体が金を携帯していなかった事である)。
B 三枝が加害者である場合