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ひがさとちょう
日がさとちょう
小川 未明
「週刊朝日」1924(大正13)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,703 字 · 8 页
しかし、彼女は、なにかにつけて、故郷のことを思い出さずにはいられなかったのです。あのころのお友だちは、どうしたろう? と思いますと、どうか、一度、ふるさとへ帰ってきたいものだと思いました。
彼女は、耳が遠いものですから、同じ奉公をしましても、ほかの女たちのように、どんな仕事にでも、役にたつというわけにはゆきませんでした。それですから、したがって、もらうお金は少なかったのです。
しかし彼女は、それをべつに不平にも思いませんでした。そしてこんど、ふるさとへ帰る時分に、着てゆく着物やおみやげに費おうと、すこしずつなりとためておきました。
五年めの春の終わりのころ、彼女は、ふるさとへ、幾日かの暇をもらって、帰ってくることにいたしました。
彼女は、新しい着物を造りました。新しいげたも買いました。そしてもっとそのうえ、東京から帰ったということを、田舎の人たちに見せたいために、どんなものを買っていったらいいだろうかと考えました。
都は、ちょうど夏のはじめの季節でありましたから、街の唐物店には、流行の美しい日がさが、いく種類となく並べてありました。
「あの日がさをさして帰ったら、どんなにみんながたまげるだろう……。