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ひはかがやけり

日は輝けり

宮本 百合子

「中央公論」1917(大正6)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,445 字 · 152 页

青空文庫

彼が口癖のように云い云いした、「良心の呵責」が一どきに込み上って来たのである。

巡査は酒を飲んでいるかと訊ねた。飲んだと答えはしたものの、実際は飲んでいなかった。けれどもどうにかして、こんな下らない、恥かしい自分の位置の弁護となる理由を探したかったのである。傍にいた年寄が、酒の上のことだからとしきりに、庇ってやった。そして「お互に若いときというものは、とかく気が荒いものでなあ」などと、巡査に巧く勧めた。ちょっと見物の手前、訓戒めいたことを喋って、そのまま、巡査は庸之助を許してやったのであった。

町はますます賑やかに、華やかになって来た。敷石道を、水を流したように輝やかせているいろいろの電燈。明滅するイルミネーション。楽隊。警笛。動きに動いている辻に立って庸之助は、呆然としている。ただ開けているだけの彼の目の前を、幾人もの通行人、電車が通り過ぎた。そして、或る一人の若者が、自分の顔をこするようにして通りかかったとき、庸之助は思わずハッとして反動的に面をそむけた。

「浩だッ!」サアッと瀧のような冷汗が、体中から滲み出すのを感じた。彼は恐る恐る頭を回して眼の隅から、今行き過ぎようとする若者の後姿を窺った。