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ひはかがやけり

日は輝けり

宮本 百合子

「中央公論」1917(大正6)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,445 字 · 152 页

青空文庫

長い間泣き放題にさせられて、幾分か疲れたとき、咲二はむりやりに、禁厭女の前に坐らされた。

皆の注目の焦点になって老婆はいよいよもったいぶった。彼女は一同に辞儀をしてから杉箸を割り、一本をとって水の面に何か書いた。天照皇太神宮を中央に十五体の神の名を書くはずなのだけれども「もう年をとると何でも面倒になるし、字は忘れるし。御免なさりませよ」と心のうちで弁解して何か解らないものを、ごちょごちょと書くように手を動かした。咲二の手をその水で洗わせ、すっかり拭いてから、右の掌に六つ字を重ねて真黒に書きつけた。

「ホラこうするとかげが出ますぞ。指の先からでも足の先からでも、顔からでも、頭からでも、白い細いかげが、さわさわ、さわさわと這い出しますぞ」

何だか思いこんだような調子で云う禁厭使の声が、泣くのをやめて、好奇心と恐怖の半ばした心持でいた咲二の心を撃った。「指や顔からむしが出る!」彼はまたたまらなく気味を悪がった。そして云われる通りに指の先を見ていた。そうすると全く、陽炎のような虫が上げた指の爪の間からフラフラ、フラフラと立ち上った。

「出た! 出ましたよ、まあ!」