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ひはかがやけり

日は輝けり

宮本 百合子

「中央公論」1917(大正6)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,445 字 · 152 页

青空文庫

けれども! 咲二だけは動かない。

お咲は目の前で、青い空と光る地面とが、ごちゃ混ぜになったような気がした。頭がひとりでに下った。

振返って、この様子を見た先生は、意外な顔をして訊ねた。

「なぜ右を向かないの?」

「僕右向きたくない!」

母親達の中から、囁きが小波のように起った。「面白いお子さんですこと」と云う一つの声が、咎めるようにお咲の耳を撃った。

先生は体をこごめて何か云った。そして、「好い子だからね」と云いながら、頭を撫でて、両手で右を向かせた。先生の顔には、始終微笑が漂っていた。手やわらかであった。が、屈んでいた体を持ち上げた彼の眼――詰問するように母親達の群へ投げた眼差し――を見た瞬間、お咲は直覚的に或ることを感じた。

「もう憎まれてしまった!」

「あれが始まりだったのだ」とお咲は思い廻らした。

「何もお前ばかり悪いんじゃあないわねえ」いない咲二を慰めるようにつぶやいた彼女は涙を拭いた。

翌日は大変暑かった。が押してお咲は出かけた。毎度の苦情――注意が散漫だとか、従順でないとかいうこと――が、並べられた。そして注意しろと幾度も幾度も繰返された。