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ひはかがやけり
日は輝けり
宮本 百合子
「中央公論」1917(大正6)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,445 字 · 152 页
彼女は子供のように、大きな声をあげて泣きながら、名状しがたい恐怖に、怯えた。この暗い部屋! この情けない苦悩! これから先、どのくらいつづくか分らない、ながあいながあい一生※(感嘆符二つ、1-8-75) 恐るべき時間が無限に、彼女の前に拡がっているのを感じた。そして考えた。
「どんなに長いか判らない一生……。一生の間……?」
不意に或る一つの非常にはっきりした考えが、彼女を馳け出させそうな勢で浮み上った。
「死ぬ※(感嘆符二つ、1-8-75) 私は……」
大声で叫んで、体ごと跳ね上ったようにお咲は感じた。けれども実際には、かえって、傷ついた獣のように、冷たく臭い畳の上に、彼女は息もつかず突伏していたのであった。
何かの形と字を、木版摺りにした、気鎮めの禁厭の紙が、彼女の乱れた髪を見下すように、鴨居にヒラヒラしていた。
おらくは、平常の通り、お咲の食事の給仕をしていた。玉子をかけた一膳の御飯を、いつまでもかかって、舐めるように食べている娘の前に、彼女は、ぼんやりと、坐っていた。引きつめた鬢が、めっきり薄くなったのや、淡い日差しが、淋しく漂っている頸元などを目に写るがままに見ていたおらくは、フト、お咲の懐から、何か繩のようなものが、三寸ほど下っているのを見つけた。