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ひはかがやけり
日は輝けり
宮本 百合子
「中央公論」1917(大正6)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,445 字 · 152 页
妙に念を入れた、複雑な表情をして云った気をつけろ、注意をしろという言葉の中から、彼女は何か心にうなずいた。帰途に買った一ダースの靴下を持って、翌る日遠いところを先生の家まで行って、とっくりと咲二のことを頼んできたのである。なぜ早く気が付かなかったろうというような軽い悔みをさえ感じた。
二日つづけて、暑い中を歩いたことは、お咲の体に悪かった。帰宅するとまもなく、彼女は激しい悪寒に襲われ、ついで高い熱が出た。開けている下瞼の方から、大波のように真黒いものが押しよせて来て暫くの間は、何も、見えも聞えも、しないようになった。押えられ押えられしていた病魔が、一どきに彼女を虐なみにかかったのである。
浩が驚いて駈けつけたときには、お咲は熱と疲労のために、病的な眠りに落ちていた。
熱の火照りで珍らしく冴えた頬をして、髪を引きつめのまま仰向きに寝ているお咲の顔は、急に子供に戻ったように見える。荒れた肌、調子を取っている鼻翼の顫動、夢に誘われるように、微かな微笑が乾いた唇の隅に現われたり、消えたりした。浩は、陰気な火かげで、かつて見たことのなかったほど活動している彼女の表情を見守った。