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ひはかがやけり
日は輝けり
宮本 百合子
「中央公論」1917(大正6)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,445 字 · 152 页
興奮してきた庸之助の眼からは、大きな涙がこぼれた。啜泣きを押えようと努める喰いしばった口元、顰めた額、こわばった頬などが、動く灯かげをうけて、痛ましくも醜く見えた。彼の胸は、八裂きにされそうに辛かった。
世の中の「悪」といわれるような誘惑や機会は、たといそれがいかほど巧妙に装い、組み立てられて来ようとも、信頼すべき父親と自分の、士の血の流れている心は、僅かでも惑わせないものだという、平常の信念に対して、このように恥辱な事件に父の名が並べられるというのは! あんまりひどすぎる。彼は大地が、その足の下で揺ぐように感じた。口惜しい、恥かしい、名状しがたい激情が、正直な彼の心を力まかせに掻きむしった。あてどのない憎しみで燃え立って庸之助は、
「うせやがれ! 畜生※(感嘆符二つ、1-8-75)」
と叫んだ。往来の者が皆この奇怪な若者に注意した。そして或る者は嘲笑い、或る者は同情し、恐れた若い女達は、ひそかに彼の方を偸み見ながら、小走りに駆ぬけて行った。
ずいぶん長い間歩いていつもの部屋に帰るまで、浩はほとんど一言も口を利かなかった。どうしても口を開かせない重いものが、彼の心じゅうを圧しつけていたのである。