轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ひはかがやけり

日は輝けり

宮本 百合子

「中央公論」1917(大正6)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,445 字 · 152 页

青空文庫

帳簿には、一厘一毛、疑問な点さえもなかったのである。

けれども、頭を集めて調べていた連中の中からは、

「なあんだ! 何でもなかったじゃないかい!」

という不満そうな、つぶやきが起った。上役の者までが、意外そうな――少くもただ安心したというだけではない――表情を浮べて、「偉い時間潰しをやったなあ」と云いながら、帳簿を伏せるのを見た浩は、思わず愕然とした。ほんとうにゾッとした。

「彼が正直であったのが、皆は不平なのだ! 若し、一ヵ処でも掛け先を、ごまかしてでもいたら、どんなに噪しゃぐつもりだったのだ!」

憤り――友愛に強められ、燃え立った憤り――が、彼の胸一杯になった。何か云わずにはおられない感情が、喉元に込み上げた。けれども言葉が見つからなかった。何と云って好いか分らなくなって、彼はフイと、部屋を出てしまった。

それからやや暫く、仲間の一人が彼を捜しに来るまで、浩は彼の「隠れ家」と呼んでいる石段で、種々な考えに沈んでいた。(K商店の二棟の建物を、接続している廊下の外に、六段ほど苔に包まれた石段がついていた。日光が、建物に遮られて、直射したことがないので、石段から拡がっている二坪ほどの地面には、一杯苔がついて、陰気ではなかったが、外のどこよりも落付いていた。