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ひはかがやけり

日は輝けり

宮本 百合子

「中央公論」1917(大正6)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,445 字 · 152 页

青空文庫

浩が、暇を惜しんで勉強するとか、月給の中から、ほんの僅かずつでも、国許の両親へ送っているということなどは、彼がくすぐったいように感じる賞め言葉を、ますます増させる材料になった。何ぞというと、引き合いに出される。それも、他の多くの若い者の励ましのためだと余りはっきり解っているときなどは、彼は嬉しいどころか、かえって不愉快になりなりした。が、ともかく一族の中では、どのくらい幸運な部に属する自分か分らないと思って、彼は一生懸命に自分のほんとの道を拓くべき努力をつづけた。けれども、ときには彼の心も情けないと感じることがあるくらい、好意の枷が体中に、ドッシリと重く重く懸っていたのである。

浩の一族は、実際幸福に見離されたように見えた。多勢生れた同胞も、皆早く死んで自分と遺ったただ一人の姉のお咲も決して楽な生活はしていない。嫁入先は、相当に名誉のあった仏師だったのだそうだが、当主――お咲の良人――恭二は見るから生存に堪えられなそうな人であった。かえって隠居の仁三郎の方が、若々しく見えるくらい衰えている。もとから貧乏なのだが、お咲が十六のとき、娘の婚期ばかり気にやんでいた母親が、自分の身分と引きくらべて何の苦情なく、嫁入らせてしまったのである。