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にちげつさま

日月様

坂口 安吾

「オール読物 第四巻第七号」1949(昭和24)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,162 字 · 23 页

青空文庫

この家が、旅館とも、待合とも、料理屋ともつかないものであるように、この主婦も、商売ずれのしたところがない。そのくせ、やっぱり商売人あがりでもあるような、わけの分らないところがあった。

主婦は間の悪そうな笑いをうかべたが、真顔に返って、

「キミちゃんが毎晩のようにお客さんをつれこんでくれますんでね。こんなことは申上げたくないのですが、気違い、或いは、まア、気違いの一種なんでしょうかね。男のお客様によって、女はそれぞれ違うんですけれどもね。これは男のお客様の好みもあるでしょうが、キミちゃんが殿方の人柄に応じて選んだり、キミちゃん自身の好みというものもあるのかも知れません」

ここまで話してきて、主婦はちょッとガッカリした顔付をして、言葉をきった。

「でも、キミちゃんが、女の子をお客様に紹介する話というのが、いつも、おんなじなんですよ。今も仰有る通りの、モモのイレズミをえぐりとった、というんですがねえ。それから、もしや、日月なんて申しやしませんでしたか」

私はいさゝか茫然たるものだった。

「えゝ、えゝ、云いましたね。男が太陽、女がお月様、一対の日月とね」

私のショゲ方はひどかったのである。