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にほんそのひそのひ

日本その日その日

石川 千代松

01 序――モース先生

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,350 字 · 16 页

青空文庫

此再来が翌年の一八七八年の四月だとの事であるが、夫れから二年間先生には東京大学で動物学の教鞭を執って居られたのである。

其頃の東京大学は名は大学であったが、まだ色々の学科が欠けて居た。生物学も其一つで此時先生に依って初めて設置されたのである。で動物学科を先生が持たれ植物学科は矢田部良吉先生が担任されたのであった。先生の最初の弟子は今の佐々木忠次郎博士と松浦佐与彦君とであったが、惜しい事には松浦君は其当時直きに死なれた。此松浦君の墓は谷中天王寺にあって先生の英語の墓碑銘がある。

先生は此両君に一般動物学を教えられた計りでなく、又採集の方法、標本の陳列、レーベルの書き方等をも教えられた。之れ等は先生が大学内で教えられた事だが、先生には大学では無論又東京市内の各処で進化論の通俗講演を致されたものである。ダーウィンの進化論は、今では誰れも知る様、此時より遙か前の一八五九年に有名な種原論が出てから欧米では盛んに論ぜられて居たが、本邦では当時誰独りそれを知らなかったのである。処が茲に面白い事には先生が来朝せられて進化論を我々に教えられた直ぐ前にマカーテーと云う教師が私共に人身生理学の講義をして居られたが、其講義の終りに我々に向い、此頃英国にダーウィンと云う人があって、人間はサルから来たものだと云う様な説を唱えて居る