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にほんにおけるしぜんじだいのれきしけんきゅうについて

日本における史前時代の歴史研究について

喜田 貞吉

「史前学雑誌 第一巻第一号」1929(昭和4)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,520 字 · 13 页

青空文庫

なんらいわゆる歴史には関係はない。令制にいわゆる太政官の史官も記録係なるにほかならぬ。有史以後とか史前時代とかいう場合の「史」は畢竟この意味における「史」の有無というにほかならぬのであった。ここにおいてか近時の学界の進歩は、当然史前時代にも歴史の存在を認めしめるようになった。必ずしも生れぬ先の父ではない。これを探るのは決して闇の夜に鳴かぬ烏の声を聞かんとするものではないのである。

ここにおいてさらに考うべきは、いわゆる史前時代なるものの包括する範囲である。わが国において普通に史前時代といえば、近ごろはただちにいわゆる石器時代を意味するかのごとく考えられているようである。誰が言い出したことかは知らぬが、いわゆる古墳時代が原史時代で、その前につづく石器時代がすなわち史前時代だというのである。これはまことに簡明で、素人にも早わかりがしそうではあるが、実際はそう都合よくは行かぬ場合がないでもない。いうまでもなく原史時代とは、夜明け方の薄明りというようなもので、史前時代と有史時代とが上からと下からと薄ぼかしにぼかされ合って、相重複している時代である。しかるにいわゆる古墳なるものは、確かに有史時代までも立派に築造せられているもので、かの横口式石室を有する普通の円墳のごときは、大化のころには盛んに行われていたと考えられる