轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

にほんにおけるくりっぷんじけん

日本に於けるクリップン事件

谷崎 潤一郎

「文藝春秋」1927(昭和2)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,290 字 · 21 页

青空文庫

この二軒のうち一軒はまだ借り手がなく、他の一軒に、約二箇月程以前から小栗由次郎が住んでいた。前記のB家はそこから四五間東寄りにあって、小栗の住宅に最も近かったのである。が、B家の主人はその夜そういう物音を聞いても、余り怪しみはしなかった。彼は小栗が大きな番犬を飼っていることを知っていたし、近頃毎夜今時分にその犬が「ウー」と牛のように呻るのを、しばしば聞いたことがあった。人の叫び声についても、それが小栗の家からなら不思議はなかった。なぜかというのに、小栗の家では時々奥さんがヒステリーを起して、亭主を打ったり蹴ったりして大乱痴気をやるというので、その噂はもう、越して来てからまたたくうちに村中に知れていたからであった。

いったいそういう昔ながらの土地へ赤い瓦の文化住宅が建てられて、都会人らしい若い夫婦が移って来れば、それでなくても村民の注意を惹くのは必然であるが、殊にこの夫婦は、彼等の噂の種になるのに甚だ恰好な材料であった。村民たちの見たところでは、夫婦は一匹の犬を飼っている以外には、女中も置かず、二人きりで住んでいた。亭主は大阪の船場にあるBC棉花株式会社の社員だそうで、三十五六の男であった。