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にほんのしょうらい

日本の将来

中谷 宇吉郎

「民族の自立」一時間文庫、新潮社、1953(昭和28)年12月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,422 字 · 13 页

青空文庫

しばらく日本をはなれていると、いろいろなことを考えるが、結局のところやはり一番気になるのは、日本の将来という問題である。

何も憂国の感情云々というような、大袈裟な話ではないが、誰でも外国にいると、少しは身仕舞などに心を配るようになる。何か不体裁なことがあったときに、日本ならば、「誰々がどういうことをした」という話ですむが、外国にいると、「日本人がこういうことをした」ということになる。それで知らず知らずのうちに、日本人という意識を、心の底にいつでも持っていることになる。

それに今一つ、心を惹かれる問題がある。それは外国に永住している日本人、とくにいわゆる一世の老人たちの、日本に対する愛情である。アメリカや南米の場合が、とくに著しいのであろうが、四、五十年も異国の土地に住みついて、一生困難な事情のもとに、激しい労働をつづけ、やっと暮しが立つようになって、一息ついたという人たちが沢山ある。そういう老人たちの、一生の望みは、一度日本へ帰ってみたいということである。

いつか、日本の雑誌に、誰かが書いて居られた話を思い出す。そういう人たちの中には、何十年ぶりかで日本を訪れることになり、横浜に着いた時には、そっと地面に坐って、日本の土に口をつけてみる人もあるそうである。