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にほんのしょうらい

日本の将来

中谷 宇吉郎

「民族の自立」一時間文庫、新潮社、1953(昭和28)年12月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,422 字 · 13 页

青空文庫

近代工業には、絶対欠くことの出来ない鉄以外の金属類も著しく足りない。世界三大漁場の第一を近くにもっていても、漁船の燃料をはじめとして、ロープや網の材料まで、大部分輸入しなければならない。現在辛うじて必要量の九割近い食糧を生産しているが、その生命の綱たる燐酸肥料の原料は、全部輸入に待つより仕方がない。

こういう点からみれば、資源に乏しい国日本という標語も、一応はうなずける。しかし日本は、果して資源に乏しい国であるかときかれると、少なくも私は、否と答えるであろう。子供の頃から、日本くらいよい国はないと思い込ませられて来たせいも幾分あるかもしれないが、冷静に考えてみても、面積の割には、日本くらい資源に恵まれている国は少ないように、私には思われるのである。

戦争以来、食糧の問題が、切実に国民の胸にひびいているので、まず食糧の例について考えてみよう。日本は食糧の自給自足が出来なくて、全体の一割五分くらいは輸入しなければならないが、このことは、日本が食糧の生産に恵まれた条件にないということにはならない。この狭い耕地で、九千万人に近い人間の食糧を、八割五分まで生産し得ることが、既に一つの驚異なのである。