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にほんのきんだいてきたんていしょうせつ

日本の近代的探偵小説

平林 初之輔

――特に江戸川乱歩氏に就て――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,706 字 · 11 页

青空文庫

「一流雑誌」の文芸付録を見て、てんで読書欲の起こらぬ人は、今日私だけではなかろうと思う。二三の作家が、探偵小説に筆を染めるという話をきいているが、これは当然の成り行きであって、その作家が、わざと調子をおろしたり、読者を軽蔑してかかったりしない限り、決してその作品が「芸術的」に価値の少ないものにならぬだろうと私は思う。それに、読者の方では、相当すぐれた西洋の探偵小説を読んでいるのであるから、いわゆる「眼が肥えている」この読者に、つまらぬ読み物を提供したって、歓迎される理由はない。探偵小説の読者は、活動写真の愛好家と同じように、一種の群団的批評家である。ファンの批評は、往々にして、専門批評家の批評よりも厳正で公平であることがある。群集心理にのみかられて、付和雷同する場合にはとんでもない「価値の転倒」が行われる惧れがあるが、情実や交友関係に左右された幇間的批評よりも、厳正を失うおそれは少ないと言えよう。

これまでに、探偵小説を発表した日本の作家に、谷崎潤一郎、佐藤春夫、久米正雄、松本泰等の諸氏があるということである。その中で、私は谷崎氏の作品を一二読んだだけである。