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にほんのせいしゅん

日本の青春

宮本 百合子

「学習院新聞」1950(昭和25)年12月16日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,484 字 · 5 页

青空文庫

卑俗な風俗小説のほとんどすべてが、読者の好奇をそそるために、闇の世界とえせの貴族趣味とをからみあわせて場面をいろどっている。成り上りに対しては、真の貴族であったほこりも甦り、しかしそのような意識を自嘲せずにいられなくする心理もあるだろう。

漱石は、彼の時代の言葉として、権力・金力をもつ境遇のものが、自分で人間らしくそれらを支配する能力として個性の確立される必要を語った。こんにち語られるべきことは何であろうか。それは権力と金力との大半はすでにそれらの人々の掌中においてわがものでなくなっているという事実である。しかも一層華美な、或いは知的めいた擬態をもって、権力と金力とはそれらの人々を通じて、威力をふるいつつある、という正常でない客観的事情についての、正直な認識である。その現実の認識に向って青春のヒューマニティーが対決させられるとき、そこに湧く思いこそは、アルバイトして勉学している学生の日々をゆすぶっている日本の青春のひとすじの熱い思いにつながるのである。

〔一九五〇年十二月〕