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おやじのことば

日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)

長沢 佑

長沢佑『日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:親父の言葉、白い魔の手、母へ、貧農のうたえる詩、蕗のとうを摘む子供等、レポーター。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,101 字 · 11 页

青空文庫

母へ

一九二九年四月十六日未明、同志吉田君はやられた。彼の家は家宅捜索――神棚は勿論、土間の隅まで掻きむしられた。翌三〇年十一月、彼の愛弟は裏の河へ落ちて死んだ。彼の家に起ったこの二つの事件は、地主の嬶共に依って次のようなデマを生み、部落内へ流布された。「神様を粗末にするから罰が当ったのだ」と。

桐の葉もすっかり散り

秋も漸々終ろうとする頃

寒い十一月の朝だった。

ささやかな葬列を囲んで

俺達は山の共同墓地へ急いだ

冷い氷雨は人々の頬を横なぐりに打ち

びっしょりと濡れた白木の棺は

寒さに凍えた

親父は沈黙り込み

「三ちゃあー」

たった一人の妹は死屍に抱き付いて

幾度も幾度も弟の名を呼んだ

そして母親は泣き乍ら我が子に詫びた

「俺の不注意から」と

俺は只怒りと悲しみの中に

彼の死を送った

「そんな噂は聞きとうも無いわ」

地主共のデマを耳にする度

信神家の祖母は俺を恨んだ

あの日――忘れ得ぬあの日――

四・一六の朝

俺の姿が門の杉垣を消えぬ間に

一切は奴等の手に……

神棚はめくられ仏壇は倒された

祖母は憎んだ――限りなく

只、孫の行為を憎んだ

秋深い朝

貧農の赤坊が死んだ

水に溺れて――

妹は愛弟の死を悼み

母親は自分を責めた