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しゅんせつせん

日本プロレタリア文学集・8 葉山嘉樹集

葉山 嘉樹

葉山嘉樹『日本プロレタリア文学集・8 葉山嘉樹集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:浚渫船、乳色の靄、生爪を剥ぐ、労働者の居ない船、坑夫の子。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,935 字 · 73 页

青空文庫

になったにも拘らず、何かが、眼に見えない何かが、滅茶苦茶に暴れまくっていた。

第三金時丸は、貪慾な後家の金貸婆が不当に儲けたように、しこたま儲けて、その歩みを続けた。

海は、どろどろした青い油のようだった。

風は、地獄からも吹いて来なかった。

デッキでは、セーラーたちが、エンジンでは、ファイヤマンたちが、それぞれ拷問にかかっていた。

水夫室の病人は、時々眼を開いた。彼の眼は、全で外を見ることが能きなくなっていた。彼は、瞑っても、開けても、その眼で、糜れた臓腑を見た。云わば、彼の神経は彼の体の外側へ飛び出して、彼の眼を透して、彼の体の中を覗いているのだった。

彼は堪えられなかった。苦しみ! と云うようなものではなかった。「魂」が飛び出そうとしているんだ。

子供と一緒に自分の命を捨てる、難産のような苦しみであった。

――どこだ、ここは、――

彼は鈍く眼を瞠った。

どこだか、それを知りたくなった。

――どこで、俺は死にかけているんだ!――

彼は、最後の精力を眼に集めた。が、魂の窓は開かなかった。魂は丁度睫毛のところまで出ていたのだ。

卵に神経があるのだったら、彼は茹でられている卵だった。