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にほんふどうき

日本婦道記

山本 周五郎

梅咲きぬ

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,286 字 · 16 页

青空文庫

それが、鼓や茶の湯のときとおなじように、またしても母からやめろと云われたと聞いて、彼はすくなからず当惑をし、同時にまた昔からの母の移り気な性質を思いだしたのであった。

母の気性がと云いかけたまま、ややしばらく黙っていた直輝は、やがて妻をはげますように云った。

「ほかの事とはちがって、おまえの和歌の才だけはかくべつだ、わたしからそれとなく母上におはなし申してみよう」

「でもそれでは、わたくしがお訴え申したようで、悪うございますから」

「それほど物のわからぬ母ではない、残った草稿は捨てずに置くがよいぞ」

加代は良人の温かい気持を胸いっぱいに感じながら、裂き残した歌稿をつつましく集めた。

その明くる夜、直輝は隠居所をおとずれた。数日まえから端ぎれを綴り縫いしていた母は、ちょうどそれを仕上げて火熨斗をかけているところだった、座蒲団を細く小さくしたようなものである。なにがお出来になりましたときくと、加代にやる肩蒲団だと答えた。

「あの寝部屋は冷えますからね、それにあのひとはあまりお丈夫ではないから、……これを肩に当てて寝るといいとおもって」

「それはさぞ珍重に存じましょう」