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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
藪の蔭
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,841 字 · 25 页
「そこもとは立直った、奉行役所に抜擢されたということを聞いたとき、拙者は自分の僅かな助力がむだでなかったことを知り、どんなに慶賀していたかわからない、これは誇るに足るりっぱなことだ、あやまちがどんなに大きくとも償って余ると思う、これでもういい、なにもかもこれで生きる、江戸詰めになったそうだが、あっちへいってもこの気持をゆるめずにしっかりやって呉れ、期待しているよ」
由紀はそのとき大藪の蔭の湿った黒土を思いだしていた。あの藪の蔭にはこのように大きな真実がひそめられていたのだ、友の過失をかばい、困難をわかちあうという、世間にありふれた人情が、ここではこれほどのことをなしとげている。然も良人はかたく秘してほのめかしもしなかった、いま瀬沼自身が告白しなければ、事実は永久に闇へほうむられたに違いない。「人はこんなにも深い心で生きられるものだろうか」由紀は切なくなるような気持でそう思った。それにしてもこの頃の自分はどうだったろう、僅かな衣装や道具を売り、出稽古をすることなどがいかにも安倍の家のためであるように思いあがった、姑に小言を云われると自分を反省するよりさきに相手の理解の無さをうらみ、自分のつくしたことが徒労だなどと思った、いったいそれほどのことを自分はしているだろうか、あの藪の蔭にひめられていた良人の真実に