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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
箭竹
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,547 字 · 23 页
という文字が彫りつけてあるのだった。
「たずねることがある、丹後をよんでまいれ、西尾丹後だ」
そう云って家綱は床几にかけた。扈従のひとりが走っていった。
御弓矢槍奉行の丹後守忠長はすぐに伺候した。家綱はまだ十九歳であるが、三代家光の濶達な気性をうけてうまれ、父に似てなかなか峻厳なところがおおかった。弓矢奉行などがじかに呼びつけられる例は稀なことなので、丹後守は叱責されるものと思ったのであろう、平伏した額のあたりは紙のように白かった。
「ゆるす、近う」
二度まで促されて膝行する丹後守に、家綱は持っていた一本の矢をわたした。
「その筈巻のすぐ下のところをみい、なにやら銘のような文字が彫ってある」
「はっ……」
「読めたか」
「はっ、仰せのごとく大願と彫りつけてあるかに覚えます」
「一年ほどまえより折おりにその矢をみる、どこから出たものか、いかなる者の作か、とり糺してまいれ」
「恐れながら」
丹後守は平伏して云った。
「御上意の旨は御不興にございましょうや、もしさようなれば御道具吟味の役目として丹後いかようにもお詫びをつかまつります」
「いやそのほうは申付けたとおりにすればよい、なるべく早く致せ」