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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
箭竹
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,547 字 · 23 页
六兵衛の婿の次郎吉が出てみると、城下のお屋敷でみかけたことのあるみよにまぎれはなかった。安之助を背に負ってびっしょり濡れていた。
「まあこれはどうあそばしました」六兵衛もびっくりしてとんで来た、
「いやそれよりもまずお召替えをなさらなければいけません。ただいま洗足をお持ち申します」
娘のさだと婿をせきたてながら、自分が洗足をとってすぐに母子を上へあげ、娘の晴着と孫の物を当座のまにあわせて着替えをさせた。いちど眼をさまして泣きだした安之助をようやく寝かしつけてから、みよは六兵衛と婿夫婦を前にして坐った。そして、主従のよしみにすがってたのむのであるが、この土地でなにかたつきの業にとりつくまで母子ふたりの世話をしてもらえぬだろうかと云いだした。六兵衛はおろおろと声をふるわせてさえぎった。
「お言葉ではございますが、おまえさまは御国ばらいのお身の上でございましょう、おふたりさまのお世話は願っても出たいところでございますけれども、まんいちこれが知れたときは国法にそむいた罪に問われ、おまえさまばかりか安之助さまの御一命にもかかわると存じます、それよりはともかく美濃のおさとへお帰りあそばすほうがよろしいのではございませんか」