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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
忍緒
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,672 字 · 20 页
五
まさしく忍緒を切った気持で、かの女は昌幸へ返書をしたためた。そして刑部にそれを持たせてやると、しずかに眼をつむり、心で合掌しながら詫びた。……孫たちはお逢い申したがっております、わたくしも一夜お伽をつかまつりとうございます、けれどもそれがかないませぬ、どうぞおゆるし下さいまし。
五
城へはお迎え申しかねる、城下へ宿所を設けるから、そこで一夜だけ過し、明朝はやくたち去って貰いたい、あやまちの起らぬよう接待はわざと女どもに命じた。そういう意味の手紙を、読み終った昌幸はわが子の手へわたした。
「さすがに本多忠勝のむすめでございますな」幸村は手紙を巻きながら苦笑をもらした、「西に事のおこったのを知っているのでございましょうか」
「そうかも知れぬ、しかしそうでないかも知れぬ」昌幸はおのれの手をみつめながら、溜息をつくように云った、「いずれにしても、女にはめずらしい堅固なこころがけだ、信之はまっすぐに小山へ立ってまいったが、なるほどこの妻があればこそ安心してゆけたのであろう」
そう云いながら、昌幸は二日まえのことを思いかえした。
箕輪で会った父子兄弟がいざ出発という前夜になって、治部少輔三成からの密使が到着した。