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にっきちょう

日記帳

江戸川 乱歩

「写真報知」報知新聞社、1925(大正14)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,863 字 · 14 页

青空文庫

私はもう、弟の死をいたむことなぞ忘れてしまったかの様に、そのなぞを解くのに夢中になりました。日記も繰返し読んで見ました。その他の弟の書ものなぞも、残らず探し出して調べました。しかし、そこには、恋の記録らしいものは、何一つ発見することが出来ないのです。考えて見れば、弟は非常なはにかみ屋だった上に、この上もなく用心深いたちでしたから、いくら探したとて、そういうものが残っているはずもないのでした。

でも、私は夜の更けるのも忘れて、このどう考えても解け相にないなぞを解くことに没頭していました。長い時間でした。

やがて、種々様々な無駄な骨折りの末、ふと私は、弟の葉書を出した日附に不審を抱きました。日記の記録によれば、それは次の様な順序なのです。

三月……九日、十二日、十五日、二十二日、

四月……五日、二十五日、

五月……十五日、二十一日、

この日附は、恋するものの心理に反してはいないでしょうか、たとえ恋文でなくとも、恋する人への文通が、あとになる程うとましくなっているのは、どうやら変ではありますまいか。これを雪枝さんからの葉書の日附と対照して見ますと、なお更その変なことが目立ます。