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にちろく

日録

山本 周五郎

「日本読書新聞」1961(昭和36)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,076 字 · 11 页

青空文庫

×月×日

今年もまた百舌鳥がやって来た。この仕事場を借りて以来、毎年こいつと喧嘩である。もう十数年になるから、初めのころのやつの曾孫くらいに当るだろう。代々「あそこへいってからかってやれ」と言い継がれているのではないか、「やつはかんしゃくを起こすから面白いぞ」とも言われているのではないかと思う。そのくらいしつっこく、仕事場のすぐ前にある灌木林へやって来て、ぎゃあぎゃあぺちゃぺちゃ鳴き喚き、騒ぎたてるのである。癪に障るから縁側へ出ていって、「なんだ」とどなると「ぎゃあ」と答える、「なんの用だ」とどなると「ぎゃぎゃぎゃ」と答え、次に私がなにを言うかを待っている。まるで、さあ面白くなってきたぞと、ほくほくしながら手を擦り合わせているようすが見えるようだ。黙っているとまた、独りでやかましく喚きちらしはしゃぎまわって飽きない。こっちはそれでなくとも仕事がおそいほうで、いつも締切に追われているから、しだいにかんしゃくが起こってき、庭へおりて小石を拾い集めると、やつをめがけて投げつける。やつはそれを待ってでもいたように、いっそう陽気になり、枝から枝へとび移りながら、耳をつんざくような声で喚きたて、嘲弄する「当りませんよ、お気の毒さま、さあお投げなさい、そら外れた」