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にちろく
日録
山本 周五郎
「日本読書新聞」1961(昭和36)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,076 字 · 11 页
というのを書けと求められた。賑やかな席であり酔ってもいたので、やりましょうと承知をしたが、それから六日めの今日になって思いだした。枚数も聞いたのだが、それはすっかり忘れていて、その代りに池部鈞さんのことが記憶にうかんだ。もはやずいぶん以前のことになるが、どこかの新聞か雑誌で、やはり「私の健康法」という質問を発し、それを受けた人たちの答えの中に、池部鈞さんのものもあり、それにはおよそ次のようなことが書いてあった。
――朝は早く起きて散歩をし、腹八分めに喰べ、よく仕事をし、ほどよく体操をし、乱酔せず、夜は早く寝ること。以上を守れば健康を保つことは慥かである。但し、頭がばかになることも疑いなし。
これを読んだころ(当時)、私は大いにわが意を得たりと思った。躯が丈夫で頭がいいなんてやつはいない、頭か躯か、精神か肉体か。われわれはどちらか一つを選ぶよりしかたがないのだ。そう思って池部さんに拍手を送ったものである。――現在、私は健康に注意しようと自戒しながら、反面、不摂生な生活から脱することができない。池部さんがいまでも同意見なら、週刊A誌へ書くのは断わろうと思うが、こんなことを問い合わせるわけにもいかないので迷っている。