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きゅうぶんにほんばし

旧聞日本橋

長谷川 時雨

10 勝川花菊の一生

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,120 字 · 15 页

青空文庫

夜更けて帰って来て、なにしろ家がせまいから、明朝また早くゆくといってくつろいでいた。その翌日いったらもう死者は家にいなかった。落魄御直参連一党がつらなって帰って来てつぶやいた。

「今度こそ角力が入用な人間だったってことがわかったよ、おばさんの役にたった一番目で、それがおしまいだ。」

「だが秀逸だ、あの男の。」

父が出てゆくとみんな頭を揃えてさげて、

「ありがとうございました。取りかたづけはすみました、角力がひとりで、しょってしまいました。」

「そうか、あの男でも、それだけの準備はしてあったと見えるね。」

「ところが、それがね、しょってしまったって、一さいの事ではないのですよ。滑稽なことにはおばさんの棺桶をしょってしまったんでさあね。」

「人夫にしょわせるのは嫌だとでもいうんでしょうね、お角力さんの心意気だあね。」

と母が言った。皆は笑った。

「とにかく、今夜はおれひとりでお通夜をします。長く世話になったからというから、家はせまいし、尤だと思ってまかせたら、奴さんその間に、すたこら、自分で始末して、棺に入れてしょって、火葬揚へもってってしまったんで――おばさん死ぬまで、重宝な権助をつかまえといたもんだ。