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わせだかぐらざか

早稲田神楽坂

加能 作次郎

「東京日日新聞」1927(昭和2)年6月11日~29日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,407 字 · 46 页

青空文庫

寅毘沙・午毘沙

何でも震災後復興事業や何かのために中止になったとかいう話もあるんだよ。』

寅毘沙・午毘沙

その時わが家の女の子供が三人仲よく手をつらねて玩具屋の前に立っているのに出会った。

『お父さん、風船買って頂戴』

七つになる一番末の子が、逸早く私の袂を捉えて甘えかかった。同行の友人の手前、私が拒み得ないという弱点を、かの女は経験によってちゃんと知っているのだった。私は文句もいえずだまって十銭の白銅を一つ握らせた。

『お兄さんも来ているわよ。』

かの女はうれしさの余りにか、おせっかいにもなおそんなことを私に告げ知らせるのであった。なるほど少し行くと、長い巻紙に出たら目に沢山数字を書きつらねたのを高く頭上にさしあげて記憶術の秘訣とやらを滔々弁じている角帽の書生を取り巻いた人だかりの中に、私は長男の後姿を見かけた。が、つかまったらことだと思って素知らぬ顔で通り過ぎた。

あちらにもこちらにも小さな人の渦が出来波が流れて、この狭い場末の一角にも、鄙びた、ささやかな、むしろ可憐な感じのものながら、流石に初夏の宵の縁日らしい長閑な行楽的な気分が漂っていた。すぐ近くの河田町にある女子医専の若い女学生が、黒い洋服姿で、大抵三人ずつ一組になってぶら/\しているのが、ここの縁日の特色のように目立った。