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わせだかぐらざか

早稲田神楽坂

加能 作次郎

「東京日日新聞」1927(昭和2)年6月11日~29日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,407 字 · 46 页

青空文庫

牛込見附

丁度袋の中をあっち行きこっち行きしているようなものだ。だから僕なんか、こうしてぶらぶらしていると、何度も同じ人に出会わすよ、のみならず、ここを歩いている人達はみんな顔なじみという気がするんだ。』と私は、あの人もあの人もと、折りから通り合せたいつもよく見る散歩人を指した。

『なるほどみんな散歩に出て来たという感じだね。』と友達がいった。

『それも他所行き気分でなく、ちょっとゆかたがけといったような軽い気持でね。だから何となく気楽な悠長な気がするよ。そしてこの辺の商人も、外の土地に比べると正直で悠長で人気が穏やかだという話だよ。通り一ぺんの客は少ないんだから、店同士でお互に競争はしていても、客に対しては一ぺんこっきりの悪らつなことはしないそうだよ。』と私は人から聞いた通りに話した。

牛込見附

私達は両側の夜店など見ながら、ぶら/\と坂の下まで下りて行った。そして外濠の電車線路を越えて見附の橋の所まで行った。丁度今省線電車の線路増設や停車場の位置変更などで、上の方も下の方も工事の最中でごった返していて、足元も危うい位の混乱を呈している。工事完成後はどんな風に面目を改められるか知らないが、この牛込見附から見た周囲の風景は、現在残っている幾つかの見附の中で最もすぐれたものだと私は常に思っている。