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わせだかぐらざか
早稲田神楽坂
加能 作次郎
「東京日日新聞」1927(昭和2)年6月11日~29日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,407 字 · 46 页
提灯行列が行われて、今の野球々場を振出しに、鶴巻町通りから矢来神楽坂を経、九段からお濠に沿うて宮城二重橋前まで、はじめて皆一斉に「都の西北」を高唱しながら練歩いて行ったその時の感激的な光景は、今もなお眼前に彷彿としている。
爾来星霜ここ二十年、大学それ自身の発展や拡張も、当時に比して実に隔世の感があるが、それにつれて附近一帯の変化発展も目ざましく、田甫の早稲田茗荷畑の早稲田は、今は唯徒に其名を残すのみとなった。私が学校にいた頃には、今電車が走っている鶴巻町裏一帯の土地、即ち関口滝あたりからずっと先、遠く山吹の里なる面影橋附近まで一面の田野で、東電変圧所の赤煉瓦の建物が、その田圃の真中にただ一つぽつんと、あたりの田園的風光と不調和に、寂しくしかも物々しく立っているのみで、蛙の声が下宿屋の窓に手に取るように聞え、蛍の飛び交うのが見えたりしたものだったが、そうした旧時のおもかげなどは疾うの昔に跡方もなく、今は一面にぎっしり家が建て詰まり、すっかり見違えてしまった。殊に電車終点附近近来の発展は驚くべきで、戸塚方面から球場前を抜けてここへ出る道路が開けたのと相まって、やや場末的な感じながらもそこにまた一廓の繁華な盛り場を形造り、早稲田の中心鶴巻町通りの繁華を、次第にそこに移動せしめつつあるが如き観もないではない。