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わせだかぐらざか
早稲田神楽坂
加能 作次郎
「東京日日新聞」1927(昭和2)年6月11日~29日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,407 字 · 46 页
山の手の銀座?
山の手の銀座?
それに往年の大震災には、下町方面は殆ど全部灰塵に帰して、今やその跡に新たなる東京が建設されつつあるので、その光景も気分も情調も、全く更生的の変化を示しているが、わが神楽坂通りをはじめ牛込の全区は、幸にもかの大火災を免れたので、それ以前と比べて特に目立つほどの著しい変化は見られない。路面がアスファルトになったり、表構えだけの薄っぺらな洋式建物が多くなったり、カッフェーやメリンス屋が多くなったりした位のもので、昔と比べて変ったといえば随分変ったといえるが、同じようだといえばまた同じようだといえないこともない。だが兎に角神楽坂は、私にとっては東京の中で最も好きな街の一つだ。こないだも芝の方に住んでいる友達が来て私にいった。
『君は主にどこへ散歩に出かけるかね。』
『そりゃ勿論神楽坂だ。殆ど毎晩のように出かける。』と私は立ち所に有りのままを答えた。
『そんなに神楽坂はいいかね。』
『そう大していいということもないけれど、一寸いいよ。それに昔からの馴染で、出るとつい自然に無意識に足が向いてしまうんだよ。銀座あたりまで出かければ兎に角、外にちょっと手頃な散歩場がないからね。