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わせだかぐらざか
早稲田神楽坂
加能 作次郎
「東京日日新聞」1927(昭和2)年6月11日~29日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,407 字 · 46 页
』
『銀座なんかと比べてどうかね。』
『そりゃ勿論とても比較にも何にもならないさ。すべてがちっぽけで安っぽくて貧弱で、田舎臭くてね。どうしても第三流的な感じだよ。併しその第三流的な田舎臭いところが僕には好きなんだ。親しみ易くてね。』
『ふふん。』友達は微かな冷笑をその鼻辺に浮べながら頷いた。『併し僕には、神楽坂は山の手の銀座だとか、東京名所の一つだとかいわれるのがちょっと分らない。あれ位の所なら、外にも沢山、何処の区にでもあるじゃないか。』
『そりゃそうだ、殊にあすこは夜だけの所で、昼間は実につまらないからね。だが夜になると全く感じが違ってしまう。何処だってそういえばそうだが、殊に神楽坂は昼と夜との違いがはげしい。昼間あんな平凡な殺風景な所が、夜になるとどうしてあんなにいい感じの所になるかと不思議な位だ。』
『実際夜は随分賑かだそうだね。』
『賑かだ。四季を通じてそうだが殊に今頃から真夏にかけては甚だしい。場所が狭いからということもあるが、人の出盛り頃になると、殆ど身動きも出来ない位だからね。』
『別にこれといって何一つ見る物もないし、ろくな店一つないようだがね。