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はやみみさんじとりものききがき

早耳三次捕物聞書

林 不忘

03 浮世芝居女看板

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,930 字 · 20 页

青空文庫

見るとなるほど女の似顔が画いてある。二十前後の美い顔だった。兼久と番頭と小僧の六つの眼が紙へ落ちると、男も向う側から覗き込んで、説明の言葉を挾んだ。

「尋ね人と言ったって、何も別にお上の筋じゃあないから、ひとつ包まず隠さず話してもらいたいんだが、この女ですがね――年は二十そこそこ、なかなかの美人だ。が、眼にすこし険がある。ちょいとうけ口だね。背は高からず、低からず、中肉で色は滅法界白い。服装は、さあ――何しろ旅から旅を渡り歩いているんだから、おそろしく汚のうがしょうが、なによりの目標てえのがこの右の眼の下の黒子だ。ねえ。」と男は紙の似顔の黒点を指さしながら、「ねえ、こんな大きな黒子だから、誰だって見落すわけはない。さあ、仔細はあとで話すとして、どうですね、この女がお店へ質をおきに立ち寄りませんでしたか。」

そう言われて久兵衛と番頭は、もう一度絵の顔を見直して思い出そうとつとめてみたが、考えるまでもなく、そんな女は兼久へは来なかった。で、きっぱりとそのむねを答えると、男はひどく落胆したようすだったが、

「そうですか。やっぱりお店へも来ませんでしたか。しようがねえなあ。