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はやみみさんじとりものききがき
早耳三次捕物聞書
林 不忘
04 海へ帰る女
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,707 字 · 12 页
透かすようにして和泉屋を見つめている。
おやじはあわてた。逃げようにも足が動かない。まごまごしていると、女が銀鈴のような声を出した。
「酒屋の主人であろう。このごろそなたがわたしをつけていることは早くから知っておりましたぞ。なろうことなら隠しておきとう思うたが、それも今は詮ないこと。そなたはわたしを何と思いやる?」
おそろしく時代なせりふだが、とにかくそんなような意味のことをいったのだろう。
「へへっ。」
和泉屋、だらしなく砂へ両手を突いた。女が訊いている。
「何と思いやるのう?」
「へえ――。」
「へえではわからぬ――わしは人間ではないのじゃ。」
なるほど海の女の声は人間離れがしている。
「え?」
とおやじは思わず顔を上げた。水を背にした女の肩に、夜の空あかりが落ちている。さらさらと砂の崩れる音がしたのは、女が一足近づいたからだ。
「人間ではない。わしは竜神の使女なのじゃ。」
「あの、竜、竜神さまの――。」
「さようじゃ。竜神の使女が君の召す御酒を購いに、夜な夜な人体をかりて陸に上るのですぞ。」
「へへっ。それは大変な。まことにありがとうござります。そういうお方とも存じませずお後を窺いまして――どうぞ無礼のほどはひらに御勘弁を。